2015年、最も心に残った13冊の本:その3(9〜13冊目)

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2015年、最も心に残った13冊の本:その1(1〜4冊目)
2015年、最も心に残った13冊の本:その2(5〜8冊目)

のつづきです。

 

所属している出版社の本も入ってしまっているので(我が子のように好きでごめんなさい)、
ステルスマーケティングにならないように該当書籍には「」を付けてあります。

 

2015年、最も心に残った13冊の本:その3(9〜13冊目)

愛するということ』著:エーリッヒ・フロム

愛するということ

ドイツの社会心理学者エーリッヒ・フロムによって書かれた名著です。

愛は本能的・自然的なものであるよりも、
能動的に行なっていく「技術」である

という主張で、原題も「THE ART OF LOVING」です。
(なので、もしかしたらなんとなく手を伸ばすのに抵抗がある人もいるかもしれません。)

僕は「自己愛」というものについて少し調べたいと思っていた時に、
パラパラとめくっていたらまさにその章があったので手に取りました。

自己愛の課題は、「愛情の対象が他者に向かず、自己にのみ向いてしまう」ことだと思っていました。
この本で気づかされたのは、「利己的な者はむしろ自分自身すら愛せていない」ということです。
自分を愛せないことによる空虚感・欠落感を埋めたいがために、人は利己的になってしまうのではないか。
欠落を埋めるために他人からの愛をひたすら求めてしまうと、
「自分が愛されるためには」ということばかりに目が向いてしまうかもしれない。
あるがままの自分自身を、他ならぬ自分こそがきちんと愛せていれば、
過度の承認欲求や自分を守ろうとする姿勢もとけてゆくのでは。

そんなことを思いました。

この本では他にも、
人間の成長段階に応じた愛や、歴史上の神への愛がどのように変遷してきたか、
などに関しても触れていて、とても興味深かったです。
長く読み継がれてきただけあるな〜と感じました。

 

「思考」のすごい力』著:ブルース・リプトン

「思考」のすごい力

好きな本に「量子力学」の話が出てくることが多くて、
学んでみようかと思っていた時にある方が貸してくださった本です。
ずいぶん長いこと手をつけられていなかったのですが(Fさん、ゴメンなさい)、
「年が明ける前に」と思って開いたらとっても面白かったです。
理系は苦手で、特に高校の時の「生物」の授業は苦痛だったので、
「生物学」の本を読む日が来るとは思っていませんでした。
が、アメリカンな著者のノリと、ユニークな例えや図を用いた科学的説明もあって、
この本は初学者である僕にも夢中で読ませてくれました。

テーマは、

人をコントロールするのは、遺伝子「ではない」。
遺伝子は設計図に過ぎず、遺伝子のふるまいを決めるのは、思考の力だ。

ということです。
この本で「エピジェネティクス(epigenetics)」という言葉を初めて知りました。
「遺伝学を超えた」といような意味です。

ものすごく端折って言うと、

・DNAは「染色体タンパク質」にカバーのように覆われているため、これが外れないと遺伝情報は発現しない
・そのタンパク質は外部環境によるシグナルによって変形する
・つまり、カバーが外れて遺伝情報が発現するか否かは、外部環境に大きく左右される

遺伝で全てが決まるのではなく、鍵を握っているのは(細胞の)外部環境だよ、ということです。
その外部環境として人の「思考」がものすごく大きな力を持っている、と繋がっていきます。
思い込みで偽の薬が効いてしまう「プラシーボ効果」は有名ですよね。
あれを始め、「マジかよ」な事例がいっぱい出てきます。
「ポジティブシンキングで人生は良くなる」みたいな話はあちこちで聞きますが、
細胞(よりももっと小さな)レベルでの科学的解説が満載なので、
知的好奇心の強い人にはとても面白いと思います。

 

出現する未来から導く――U理論で自己と組織、社会のシステムを変革する』著:C・オットー・シャーマー 

出現する未来から導く――U理論で自己と組織、社会のシステムを変革する

「U理論」というなかなか深遠な人や組織の変革理論があるのですが、
2015年はこれがすごく腑に落ちた年でした。
ご本人が意識されているかどうかは定かではありませんが、
尊敬している方の多くはこの変革プロセスに則っているなと感じたのです。

「U理論」の「U」は何かの頭文字ではなく、アルファベットの形自体が名前の由来です。
「一度下って、谷の向こう側へ登る」というイメージです。
それが実際どういう手順なのかはこの記事でざっくりとならわかると思います。

過去の経験から学ぶことももちろんとても重要です。
ですが、あまりに複雑な問題と向き合ったとき、
それだけではどうにもならないことが出てきます。
過去の経験にとらわれるがゆえにうまくいかないこともあります。

そんなときに「U理論」は、
「出現しようとしている未来から学ぶ」方法を提示しています。

これだけ聞くと「なんじゃそりゃ!?」って感じになると思いますが、
ちょっと振り返ってみて「ん?なんとなくその感じ分かるかも」という気がした方は、
学んでみるとすごく面白いと思います。
人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門』が一番わかりやすいと思います。
(入門と言いながら400ページ以上あるのですが、本当に分かりやすいです)
最近では、『マンガでやさしくわかるU理論』なんていう本も出ています。
自分の外側の問題を解決する前に、内面のあり方をどう変えていくか、が鍵になります。

前置きが長いですが、『出現する未来から導く』は「U理論」提唱者のオットー・シャーマー氏の著書で、
実際の社会の中でこの理論を用いてどんな変革が起きているか、あるいは必要か、を説いています。
いわば、「U理論の実践編」と言えるかもしれません。
割と大きな(マクロ)視点で「社会を変えたい」と思っている人にオススメです。

たぶん2015年に一番精読した本で、
ほぼ全てのページにラインとコメントが入っていました。

 

ハドリアヌス帝の回想』著:マルグリット・ユルスナール

ハドリアヌス帝の回想

2015年、一番衝撃を受けたのはこの本だと思います。

古代ローマに「五賢帝時代」と呼ばれる時代があります。
優秀な皇帝が続いたということですが、そのうちの一人がハドリアヌス帝です。
この本は、病床にある彼が、後に皇帝になるマルクス・アウレリウス・アントニヌスに向けて綴った手記、
という形をとった小説です。

そうなんです、実際の手記じゃないんです。
なのに、読んでいるとハドリアヌス本人が綴っている独白録だとしか思えないんです。
もちろん史的事実は追っていると思いますが、これが小説とは…
いったい著者はどんな想像力と感性を持っているんだと度肝を抜かれます。
もはや憑依だと思います。

この凄まじい同化力を持つ著者は、マルグリット・ユルスナールというフランスの作家です。
余談ですが、本名はクレイヤンクール(Crayencour)で、
ユルスナール(Yourcenar)はアルファベットを並べ替えたアナグラムだそう。

巻末に収録されている「作者による覚え書き」というユルスナールのメモによると、
この本を発想して書き始めたのは、20歳〜25歳の時。
がしかし、この本は「40歳を過ぎるまではあえて着手してはならぬ類の著書」であると悟り、
執筆を中断します。
ユルスナールが生まれたのが1903年で、この作品が発表されたのが1951年なので、
書き終えた時にはだいたい48歳かな。
20歳から書き始めたことを考えると、中断期も含めて28年かけているんです。
まるまる僕が生きてきた年数と同じであり、
ネルソン・マンデラの投獄期間より1年長いです。

史実を追っただけの歴史家にも、想像力に頼っただけの作家にも、
決して辿り着けない領域だと感じました。
文体は決して現代人にとって簡単なものではありませんが、非常に味わい深く、
一度リズムに乗り出すとたまらないです。
この記事では中身に全然触れていませんが、深い教訓に満ち溢れています。

図書館で借りて読み終わって、「あ〜手元に欲しい」と思っていたら、
その直後に古本屋さんで、書店では手に入らないであろう旧版を見つけて即買いしました。
今では線だらけになっています。
(でも装丁は新装版の方がかっこよくて好きです。)

 

自省録 』著:マルクス・アウレーリウス

自省録 (岩波文庫)

上記の本でハドリアヌス帝が宛てた相手こそが、
この『自省録』の著者マルクス・アウレリウス・アントニヌスです。
おそらく、世界史で習う最も長い固有名詞じゃないでしょうか。
スリランカの首都スリジャヤワラダナプラコッテより2文字も多いです。

彼はストア哲学に傾倒し、哲人皇帝と言われています。
「哲学者の手に政治をゆだねることが理想だ」と言ったプラトンに従えば、
まさに「賢帝」だったのでしょう。(五賢帝時代最後の皇帝です)

原題の「TA EIS HEAUTON」の意味は、
岩波文庫(1956年)の訳者まえがきでは「自分自身に」
Wikipedeiaでは「彼自身へ」となっています。
(本人が付けた題なのかは定かではありません)

ということで、この本は彼が自分自身へ語りかけたメモ録です。
なのでストーリーはなく、短い断片的な思索がまとまっている形式です。
自分自身に語っているのですが、「君は」という書き方をするので読んでいてドキッとします。
ストア学派は「ストイック」の元々の意味でもあるので、
書かれていることは非常に禁欲的で厳格です。
ちょっと自分を戒めたい時に良い薬になります。

・失いうるものは「現在」だけであり、生きられるのも「現在」だけである
・外部の事象を解釈するのは「主観」であり、それは自らの力で変えられるものである。
・すべての事象は宇宙の自然が為すものであり、一瞬も早くなく、一瞬も遅くなく、起るべくして起る
・コントロールできるものに対しては真摯で建設的な姿勢を、コントロールできないものには委ねる心を

全体的にそんなメッセージを受け取っています。

この本は2013年にも読んでいて再読だったのですが、再読時の方が響きました。
初読時にしかない刺激というものももちろんあります。
でも、その時々の心情で受け取り方は変わってくるので、
良い本は繰り返し読むべきですね。

品位を失いかけている時は、いつもこの言葉を思い出すようにしています。

今後なんなりと君を悲しみに誘うことがあったら、
つぎの信条をよりどころとするのを忘れるな。
曰く、

「これは不運ではない。しかしこれを気高く耐え忍ぶことは幸運である。」

 

 

 

 

 

以上、「2015年、最も心に残った13冊の本」でした。

2015年、最も心に残った13冊の本:その1(1〜4冊目)
2015年、最も心に残った13冊の本:その2(5〜8冊目)

 

 

2016年も素晴らしい本に
たくさん出会えますように。

 

 

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