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個人的な井戸の底にある共通の水脈

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この1週間、足首を壊して歩きづらかったり、
疲れが溜まっていたせいか、両腕に出現した発疹が消えなかったり、
ちょっと大変だった。
今日ひと段落があったので、明日は小休止を入れようと思っている。
「何をしようか」と考えた時に真っ先に思いついたのが、

「走りたい」

だった。
サッカーをやっていた時も、身体を動かしていないと落ち着かない体質だった。
マラソンを再開してからも、またその傾向が見られる。

スポーツは、一つの中毒だと思う。

 

 

夏は夜。

特に、秋に向かい始めた夏の夜はとても好き。
暦の上では8月7日が立秋だそう。
でも、今くらいの時期にならないと、
なかなか秋に向かっているとは感じられないのが正直なところ。

湿気が引き始める感覚。
そのおかげもあってか、虫の音もより響く。

都会は景色が良くないけれど、虫の音は変わらず綺麗だと思う。
ただそこにだけ耳を傾けて、一晩を過ごしたくらい。

帰り道は、自然とその音が聴ける道を選んでしまう。

感性を失った時が、一番怖い。
この感覚は、大事にし続けたいと思う。

 

 

 

最近の本

ユング心理学入門―“心理療法”コレクション〈1〉 (岩波現代文庫)
ユング心理学入門 〈心理療法〉コレクションⅠ

カンボジアにいる後輩から、「これ、読んでおいてください」と与えられた課題図書。
著者の河合隼雄さんは、日本人でユング心理学を学んだ(おそらく)先駆的な方で、
箱庭療法を日本に導入したことでも有名。

この方の著書は何作か読んでいて、元々かなり興味を持っていた。
特に『影の現象学』は飛び抜けて面白く(最初に読んだ本がこれだったことも大きいと思う)、
人は無意識の中に「自分が生きることを選ばなかった形」をどれだけ押し込めているのかを教えてくれた本で、今でも時々読み返す。

影の現象学 (講談社学術文庫)
影の現象学

この本を読んでから、寝ている時に見る「夢」に対する見方も相当変わった。
(悪く言えば、不必要に夢に意味を感じてしまうようになってしまった。夢は昔から嫌になるくらい見る)

河合さんの自伝『河合隼雄自伝 未来への記憶』も面白い。

河合隼雄自伝: 未来への記憶 (新潮文庫)
河合隼雄自伝 未来への記憶

表紙を見ればひしひしと感じるけれど、
河合さんが「愛すべきおっさん」であることがよくわかる本。
持ち前のユーモアで、気に入られる人にはとことん気に入られ、
相性の合わない人とは徹底的に喧嘩する姿がとても気持ちいい。
とにかく「一人ひとりの人間」への関心が尽きないところも魅力で、
臨床をとことん大事にする姿勢に繋がっているのだなとわかる。
心理学というと、人を理論で見出されたカテゴリーに区切ってしまうイメージがあるけれど(「あなたは何々型」とか)、
河合さんはあくまで「一人ひとり」を見ていると思う。
尊敬する方々を思い浮かべると、みんなこの「一人ひとり」を大事にしている。

 

話が戻って、『ユング心理学入門 〈心理療法〉コレクションⅠ』で特に面白いのが、
「個人的無意識」と「普遍的無意識」の話。
これは他に読んできて好きだった本にとても共通している分野。

河合隼雄さんは村上春樹さんと対談をしている(『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』という本にもなっている)。

村上春樹、河合隼雄に会いにいく (新潮文庫)
村上春樹、河合隼雄に会いにいく

「河合さんは、自分の物語を深い場所でわかってくれる唯一の人」
というようなことまで語っている村上さんは、
物語を生み出すときに降りていく心の深い場所を「井戸」に例えることが多い。
あくまで「個人的な」井戸を深く深く降りていくと、
人間にとって「普遍的に」通じる水脈にたどり着くことがあると。

 

個人的な感覚ではあるけれど、芸術家の真価は、
本当に深いところ(水脈)から汲み上げたものを、
自分という通路を通してとても個人的な表現で浮かび上がらせて、
だけどそれに触れた人たちを、もう一度深い水脈まで降ろさせてしまうことではないかと思っている。

村上さんも「自分が書き上げたものの意味がわからない」とインタビューでよく語っていて、
その辺りは「個人的無意識」に通じるのかもしれないし、
読み手もなぜか「なんとなく知っている感覚」を呼び覚まされるのは、
表現されたその「個人的無意識」が「普遍的無意識」に繋がっているものだからではないかと思う。

村上さんはユングの言っていることにとてもシンパシーを感じているそうだけれど、
ユングの本は意識的に読まないようにしているらしい。
知り過ぎてしまうとそこに引っ張られて、
自由な創作活動に支障をきたすかもしれないから、というような理由だったと思う。

両方読んでいると、「いやいや、こっそり読んでるんじゃないか?」
と思うくらい、語っていることが共通していて面白い。

 

このような話は、心理学や芸術の世界だけではなく、
「リーダーシップ」や、(まだかじった程度で不勉強だけれど)「量子物理学」の分野でも、
「あぁ、井戸の底の話と繋がっている」と思えることもある。

そもそもジャンルなんて便宜的に区切ったもので、
無理やり引いた国境線のようなものだと思う。
枠にとらわれずに共通する何かを感じ取った時は、
「学ぶって素晴らしいことだ」と心から感じるし、
もっと学び続けたいと思う。

自社本だけれど、ここまでの話にとてもマッチする本はこれ。

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源泉 知を創造するリーダーシップ

久しぶりにじっくり読み返したい。
そうそう、明日は「走りたい」と同じくらい「本に浸りたい」。

そしてとりあえず、発疹にお引き取り願いたい…

 

 

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(いい感じの「井戸」の写真のフリー素材は、案外ない。)

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