2015年の読書振り返り
振り返ろうと思ってまずびっくりしたのは、
もう2016年が2ヶ月終わろうとしているということ…
やばい、はやい。
さて、2015年は107冊の本を読んでいたようです。
煩悩の数まであと1冊及ばず。
そのうち、
・87冊が初めて読んだ本で、20冊は再読本
・去年のテーマにしていた「古典文学」は22冊
改めて見てみると、結構いい割合だったなと思います。
ちなみに2016年は、
・再読本:2〜3割
・理系本(特に量子力学系):1〜2割
の予定です。
去年の読書をもう少し深く振り返りたいと思い、
ここで2015年に読んだ本の中で特に印象深かったものを紹介してみます。
(2015年に「読んだ」であり、2015年に「発売した」とは限りません)
無計画に書いてみましたところ、
不吉なことに13冊になりました。
足りなかった煩悩をここで取り返した感じです。
僕の2016年を暗示しているのかもしれません。
所属している出版社の本も入ってしまっているので(我が子のように好きでごめんなさい)、
ステルスマーケティングにならないように該当書籍には「※」を付けてあります。
2015年、最も心に残った13冊の本(1〜4冊目)
1983年に発表された宮崎駿さんの作品です。
フルカラーの漫画で、100ページちょっとの短いお話ですが、
彼はこの作品をアニメーション化させることを夢見ていたそうです。
書店でこの本を見つけてパラパラとめくっていたら、
いきなり「ヤックル」が出てきて声を出してしまったのを覚えています。
ヤックル、知ってますか?
知らなかったらググってくださいね。
『もののけ姫』では固有名詞で登場しますが(そして僕のチャリの名前でもありますが)、
『シュナの旅』では種族名として出てきます。
なので、ヤックルがそれはもういっぱい出てきます。
一コマの中に13匹も出てくるページがあるくらいです。
それだけでもこの本を読む価値があります。
小国の後継者であるシュナは、飢えに苦しむ王国を救うべく、
「金色の種」を求めて西へと旅立ちます。
道中で、人食いや人の売り買いという負の世界を見ながらも、旅を続けるシュナ。
「金色の種」が実る地に辿り着いたとき、
作物を豊富に実らせるその種が、
一体どのようにして生まれてくるのかを知ってしまいます。
これがかなりショッキングでした。
自分たちの世界の食べ物の裏側で起こっているかもしれないことと、
思わず重ねてしまいました。
この物語はチベットの民話『犬になった王子』が元になっているそうです。
短いながらも「食べる・生きる」というテーマを強く考えさせられる物語でした。
世界観がとてもジブリなので、『風の谷のナウシカ』や『もののけ姫』が好きな方は是非ご一読を。
ナウシカと言えば、漫画版の『風の谷のナウシカ』は名作です。
人生で影響を受けた本としてこれを挙げる著名人も多いです。
映画版は原作の全7巻のうち、2巻の途中くらいまでしか描かれていません。
なので、ぜひ原作も読んでみてください。
著者のドネラ・メドウズさんは、世界の複雑な問題を分かりやすく伝えるプロです。
『もし世界が100人の村だったら』の原案を作った方で、『成長の限界』の著者でもあります。
奄美大島で被害の多いハブをやっつけるためにマングースを投入したら、
そのマングースはハブではなく天然記念物のアマミノクロウサギを標的にし始めてしまった…
なんていう話が最初に出てきます。
問題を表面的・近視眼的に捉えてしまうと、
打った対策がかえって別の問題を引き起こしてしまうことがあります。
そんな複雑な世界と向き合うための手段が「システム思考」です。
物事の因果関係は、
・A→B→C→D→E
のような単純な「直線」ではありません。
「CはAにも影響を与える」ことがあり、そうすると矢印は「ループ」型になります(フィードバック・ループ)。
CがAを強める関係にある場合には、AはさらにBを押し進め、BはCを強化し、CがまたAを…
例えばこれは「自己強化型フィードバック・ループ」と言います。
システム思考は、起きている物事の全体像をループ図で捉えながら、
全体のシステムに大きな変化をもたらせる「レバレッジ・ポイント」を見抜きます。
世界が複雑になればなるほど、この考え方は必要になってくるはず。
副タイトルの通り、作家・村上春樹のインタビュー集です。
単行本ですでに持っていて繰り返し読んでいたのですが、
追加インタビューが入っている文庫版を見つけてまたもや読みました。
何度読んでも創作意欲がくすぐられます。
物語を書くとき、村上さんは「心の地下室」のような暗闇に降りていくそうです。
面白いのは、そこで見たものを「分析したくはない」、と言っていること。
僕としては、そこからいちいち意味を読みとったりはしたくないのです。
それをそのまま総体として受容したい。
「総体として受容」ってすごい言葉ですよね。
人は物事に自分なりの(あるいは人から借りた)解釈を付与して言語化することで安心するものだと思っています。
でもその解釈は、物事のある面を「切り取る」ということです。
形をきれいに整えることで、パンの耳みたいに捨てられてしまう部分があります。
捨てざるを得ないのです。
だから、「分析をしないで、総体として受容する」っていうのはすごいことです。
そして、ここに村上さんの「物語」の強さがあるのだと思います。
heal(癒す)、holy(神聖な)、health(健康)の語源は、
Whole(全体)の語源と同じだと言われています。
もちろん断片的な「たった一言」が人を癒すこともあるのですが、
物語という「全体」をくぐり抜けることで得られる癒しの力はより強いのだと感じます。
それが総体的な物語であればあるほど。
それは単に「テーマが広い」ということではないと思うのですが、
語りだすとキリがなくなりそうなのでこの辺で。
あとこの本を読むと妙に、早寝早起きとトレーニングをしたくなります。
村上さんは毎日走り、多くのマラソンやトライアスロンの大会に出るようなランナーです。
『走ることについて語るときに僕の語ること』というエッセイ本を出しているくらいです。
夜は8時とか9時には寝てしまい、朝4:00頃に起きて午前中に集中して執筆する、
という生活をずっと続けてきたそう。
物語を書く時に降りていく心の地下室はとても危ないところで、
人によっては帰ってこれなくなってしまうらしいです。
作家を続けていくには「きちんと地下室から帰ってくる力」が必要。
ということで、コツコツとあの生活リズムと運動を続けて鍛えているそうです。
芸術気質な人って不健康なイメージがありましたが(←失礼)、見方が変わりました。
「病は気から」とは言いますが、「心は身体から」でもあります。
「健全な精神は、健全な身体に宿る」、というやつですね。
僕はこの本を、「写真」とか「カメラ」が趣味な人におすすめしています。
撮影の本ではまったくないのですが、被写体選びにいい影響があるんじゃないかと。
特に意味を見出すでもなく、ただただ印象に残っているシーンって、
人生にはけっこう多くありませんか?
著者の岸政彦さんはこの無意味さを愛し、
「本当に好きなものは、分析できないもの、ただそこにあるもの、日晒しになって忘れられているもの」
と語っています。
(先ほどの「総体としての受容」の話となんとなく繋がってる気がします)
小さい時から道端で拾ったなんでもない石ころをずっと眺めていられたくらい、
世界中に散りばめられたなんでもない「断片」が好きなのです。
この本には「断片的な」世界の出来事のいくつかが、ただただ書かれています。
帯の文言も素敵です。
この本は何も教えてくれない。
ただ深く豊かに惑うだけだ。
分析のないところには価値がないというのであれば、
この世界の出来事の豊かさの多くは失われてしまうと思います。
「意味の前」に、物語は確かにあるのです。
普通の人たちの中に。
ありふれた日常の中に。
見えなくとも確かに存在している世界中の人々の生活の中に。
そのことに改めて気づかされる本です。
隣の人を、すれ違う見知らぬ人を、今より少し大切にできるようになるかもしれません。
【つづき】
2015年、最も心に残った13冊の本:その2(5〜8冊目)
2015年、最も心に残った13冊の本:その3(9〜13冊目)